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学位論文

学位
窪田, 庸子 ; Kubota, Yoko
出版情報: 金沢大学大学院社会環境研究科博士論文.  金沢大学大学院社会環境研究科
URL: http://hdl.handle.net/2297/3793
概要: Abstract This study was aimed at investigating the relationship between maternal communication styles in mother-child in teraction and psychic structures of children in the Locutional phase. The participants were 20 children, ranging in age from 12 to 28 months, and their mothers. Children were videotaped while interacting with their mothers during 10-minutes of free play at home. Maternal responsiveness and three components of maternal directiveness (response control, topic control, and turn-taking control) were examined in the context of the child’s interactional behavior. Psychic structures of children were measured in two way, that is the frequency of their emotional behaviors at the time and the frequency of their behavioral problems two years later. The results were as follows: (1) The more maternal turn-taking control (more frequent turns and more frequent utterance) were used, the less positive emotional behaviors of children were expressed. (2) The more maternal response control (more frequent response oblige turns and more frequent switch oblige turns) were used, the less behavioral problems of children were expressed. It was suggested that maternal turn-taking control obstructed interactive communications with their children, while maternal response control promoted them. It also was suggested that maternal directiveness of their communication styles in mother-child interaction had relationship with children’s personality formations.   学位論文概要 本論文は、発話行為期の母子相互作用における伝達行動のスタイルが子どもの心理的側面に及ぼす影響を検討し、コミュニケーションのあり方と子どもの人格形成の関連について実証的に検討したものである。とりわけ自律性形成段階に焦点をあて、愛着理論や情動調律理論では扱われていない伝達行動スタイルという観点から母子相互作用を観察することを特徴とする。 本論文は、第Ⅰ部「青年研究からの出発」、第Ⅱ部「発話行為期の母子相互作用における伝達行動のスタイルと子どもの心理的側面の関連」の2部から構成される。 第Ⅰ部は5つの章から成る。第1章では、本研究の背景、本研究の目的、本論文の構成を述べた。青年たちとの面談によって、幼少期からの親子コミュニケーションのあり方が、すなわち母子相互作用における伝達行動のスタイルが子どもの人格形成に関連をもつのではないかという着想を得たこと、そして子育て相談での母親たちの要請から、今ここで役に立つ子どもへのかかわり方の手がかりを得たいと考えたことを動機とし、筆者が学んだエソロジーや関係学にもとづき、単体ではなく関係性をみる視点から母子相互作用を研究しようとした。 第2章は、本研究の端緒となった事例研究である。人格形成における自律性の形成に焦点をあて、青年の仲間関係の持ち方にみられるそれぞれに異なったタイプを自他の要求への対処の仕方と仲間集団への参加の仕方という観点から検討し、それらのタイプと幼少期からの親子関係とのあり方の関連を検討した。大学生および大学院生の総数5名を対象とし、幼少期から青年期に至る仲間関係と親子関係について半構造化面接を行った。その結果、仲間関係の持ち方のタイプは5類型に分類できること、それらが幼少期からの親子関係と関連をもつことが示された。5類型とは、仲間にいつも入っているものでは、自己の要求を優先させる「迎合型」と他者の要求を優先させる「追従型」、仲間にいつも入っていないものでは、自己の要求を優先させる「忌避型」と他者の要求を優先させる「回避型」、そして、時と場合に応じて仲間に入ることも入らないことも自由な、自他の要求を共存させる「対等型」であった。一方、親子関係のあり方にも、それらに対応する5つのタイプが認められた。自律性は、子どもと子どもにかかわる他者との相互関係によって形成されてくると考えられたが、その際、親子関係には子どもの自律性形成を促進するものと阻害するものがあり、自他の要求を共存させる「対等型」の親子関係のあり方が子どもの自律性形成を促進すると考えられた。 第3章では、第2章の研究から浮かび上がったテーマである親子コミュニケーションのあり方と人格形成との関連について探索的研究を行った。対象は、前章で対象とした5名を含む大学生および大学院生8名であった。親子コミュニケーションの不全を訴えるエピソードを手がかりとしてその内容を検討し、人格の葛藤的部分との関連を検討した。その結果、葛藤を抱えていない群では、双方向的なやりとりが行われる「相互理解型」のコミュニケーション・パターンが認められ、自律性の葛藤をもつ青年の群では、やりとりの方向に不均衡がある「不均衡型」、基本的信頼感にまたがる葛藤をもつ群では、双方向的なやりとりが行われない「交渉不能型」のコミュニケーション・パターンが認められ、幼少期からの親子コミュニケーションのあり方と子どもの人格形成には関連があることが示唆された。また、以下の5つの作業仮説が得られた。それらは、①子どもの人格形成は、人的環境である周囲の人たちとのコミュニケーションを介して達成される。②応答的なコミュニケーションによって、子どもは自由な自己表出を保障され、それが受け止められることを体験し、子どもには自分や他者に対する基本的信頼感が形成される。③双方向的なコミュニケーションによって、子どもは自分の意見を表出し、他者の意見を受け止め、自他の欲求が異なる場合には交渉によって解決をはかることを体験し、自律性が形成される。④子どもは親子間のコミュニケーションを通して、メッセージ内容ばかりではなく、そのコミュニケーションが行われている両者の関係の持ち方をも学びとる。したがって、親のかかわり方に一定のコミュニケーション・パターンが固定して存在する場合には、子どものコミュニケーション・パターンも固定したものになりやすい。⑤人格の葛藤的な部分とコミュニケーションの不全には関連がある。コミュニケーションの不全の一つである「交渉不能型」のコミュニケーションは基本的信頼感の形成を阻害して基本的信頼感にまたがる葛藤をもたらし、「不均衡型」のコミュニケーションは自律性の形成を阻害して自律性の葛藤をもたらす、というものである。 第4章では、第3章の研究結果を心理臨床に応用した事例を報告した。親子コミュニケーションの不全に介入することで変化をもたらすことができれば、子どもの人格の葛藤的部分にも変化をもたらすことが可能になるのではないかと考え、中学生の子どもの不登校に悩む母親との心理相談場面に語用論的ビデオ分析を導入した。その結果、母親が自分の「不均衡型」コミュニケーションに気づき、実生活での伝達行動のスタイルを改善することによって、母子コミュニケーションが双方向的なものへと変化した。それに伴い、母子の相互理解が深まり、子どもが自ら進んで再登校するようになった。語用論的ビデオ分析による母子コミュニケーションのあり方への介入が、心理的な面でも母親や子どもに影響を与えることを明らかになり、母子の双方向的なコミュニケーションが子どもの自律性形成を促進する可能性が示唆された。 第5章では、探索型研究である第2章から第4章までの青年研究で得られた仮説を実証するために、検証型研究が必要とされることを述べた。また、母子相互作用と人格形成の関連を検討する際の観点として、従来の愛着や情動調律ではなく、「コミュニケーションのあり方」という観点を用いることによって、基本的信頼感形成の時期ばかりでなく、自律性形成の時期を含め、生涯にわたる対人相互作用を一貫して検討することが可能になることを考察した。子どものコミュニケーションのあり方は発達段階によって変化し、一語文が話せる頃を過ぎると双方向的コミュニケーションが可能になる。青年の親子コミュニケーションにみられた「交渉不能型」「不均衡型」「相互理解型」は、本来、双方向的コミュニケーションが可能な時期での3種類のバリエーション、それぞれ一者関係的、二者関係的、三者関係的関係把握のしかたのコミュニケーションのあり方であると考えられる。したがって、それぞれのあり方で行われるコミュニケーションを通じて子どもに形成される対人関係の質もそれぞれに応じて異なると考えられるからである。そして、第Ⅱ部で行う母子コミュニケーションのあり方と人格形成に関する実証的研究についての構想を述べた。 第Ⅱ部は、第6章から第10章までの5つの章から成る。第Ⅰ部の研究により示唆された母子コミュニケーションのあり方と子どもの人格形成の関連について、乳幼児期の母子相互作用を直接観察して実証的な研究を行った。 第6章では、母子相互作用と子どもの人格形成に関する先行研究について、精神分析的立場からの研究、養育態度研究、気質研究、愛着研究、情動調律研究、日本における研究などを概観し、本研究の方法論を検討した。子どもの人格形成に母親との相互作用が重要な役割を果たしていることは、Freud, S. 以来、自我心理学の発達理論等の多くの研究によって指摘されてきたが、そのような仮説を検証する方法論は近年、Spitz(1962など)の母子相互作用そのものを観察して行う実証的な研究によってようやく開拓されたばかりの領域である。映画やビデオテープを用いたマイクロアナリシス(微視的分析)が母子相互作用のプロセスを検討する際に有効であることが明らかになり、本研究でもマイクロアナリシスを用いることにした。ただ、それらの研究はおもに乳児期の愛着や情動調律の観点から行われており、筆者が関心を持つ「自他の両者を視野に入れて」自他のいずれの要求を優先させるかという側面については言及されていなかった。そのような側面は幼児期のしつけの段階の親子関係で意味をもってくるものであり、養育態度研究で扱われていた。Baumrind(1967)により見いだされた指示性、応答性の2次元が養育態度の分析観点として有効であることが明らかになっている。親の指示性が強すぎるコミュニケーションや応答性が見られないコミュニケーションは、第3章での「不均衡型」や「交渉不能型」のコミュニケーションであるととらえることが可能である。 第7章では、母子相互作用と子どものコミュニケーション発達に関する先行研究を、伝達行動のスタイルを扱った研究に焦点をあてて概観し、本研究で用いるTannock(1988b)のカテゴリを検討し、それが相互作用のプロセスをとらえるように工夫されていること、及び、指示性や応答性を伝達行動のスタイルやターン数、発話数などによって観測することができるように構成してあること等を明らかにした。 第8章では、母子相互作用におけるコミュニケーションのあり方が子どもの心理的側面に同時的に及ぼす影響について実証的研究を行った。幼児期初期の発話行為期にある子どもとその母親20組を対象とし、日常の自由遊び場面における母子相互作用をビデオに録画して分析を行った。コミュニケーションのあり方はTannock(1988b)を参考にして作成した伝達行動のスタイルを指標として観察した。子どもへの同時的な影響については、子どもから直接に言語報告を得ることは困難なので、外部から観察することができる情動的行動を用いた。両者の関連を検討した結果、指示性の3つの側面である応答統制、ターン・テーキング統制、話題統制のうち、ターン・テーキング統制の側面で、発話数のバランス、ターン数のバランスともに快の情動的行動との間に中程度の負の相関が認められた。これは、母子コミュニケーションで会話の量のバランスがとれていない場合には子どもの快の情動的行動の発現が妨げられやすいことを示すと考えられ、第3章で得られた双方向的コミュニケーションの有無が子どもの人格形成に影響を及ぼすという作業仮説を部分的に支持するものであると考えられた。 第9章では、前章で対象とした20組のうち、追跡調査が可能であった15組の母子を調査対象として継時的な影響を検討した。継時的な影響を測定するものとしては、子どもの問題行動および情緒的問題についての客観的尺度として、英語圏で定評のあるEyberg Child Behavior Inventory (Eyberg, 1992) の問題行動強度得点を用いた。その結果、指示性の3つの側面のうち、応答統制の側面で、応答要請および話題転換要請の出現頻度と子どもの2年後の問題行動強度得点との間に負の相関が認められた。これは、子どもからの伝達的応答を要請する力が強いほど子どもの2年後の問題行動の発現が少ないことを示しており、指示性が強いと問題行動の発現が多くなるという仮説には反する結果であった。しかし、指示性を3側面の内容別にとらえなおし、応答統制の側面は子どものコミュニケーションへの参加を誘導し相互理解を深める機会を多くさせるように働くと考えると、この結果は第3章で得られた双方向的コミュニケーションの有無が子どもの人格形成に影響を及ぼすという作業仮説を部分的に支持するものであると考えられた。 第10章では、以上の研究の諸結果をまとめ、コミュニケーションのあり方という観点が、子どもの人格形成を検討するうえでの一つの有効な観点として働く可能性があることを明らかにした。また母子のコミュニケーション・パターンに継続性が認められるか否かについては今後の確認が必要であることを指摘した。<br />取得学位:博士(学術),授与番号:博士甲第88号,授与年月日:2007年3月22日,授与大学:金沢大学,論文主査:大井学 続きを見る
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論文

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牧田, 治朗
出版情報: 金沢大学十全医学会雑誌.  96  pp.756-772,  1987-08-20.  金沢大学十全医学会
URL: http://hdl.handle.net/2297/7968
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論文

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Gary, Ross
出版情報: 平成27(2015)年度 科学研究費補助金 基盤研究(C) 研究成果報告書 = 2015 Fiscal Year Final Research Report.  2015-04-01 - 2018-03-31  pp.6p.-,  2018-06-01. 
URL: http://hdl.handle.net/2297/00054688
概要: 金沢大学医薬保健研究域薬学系<br />今回の研究では、オンラインで言語を学ぶ環境下では、特に音声認識を伴う時に、自動的フィードバックが自発的に伸びる可能性があることが示唆された。しかしながら、Eメールのような直接的フィードバックは、モチベ ーションを上げる可能性は低い。学習者は、フィードバックが瞬間的、且つ知的で客観的である場合には、課題に取り組むことをいとわないようである。さらに、音声認識はネイティブスピーカーと学習者とを識別することができるが、驚くことに音声認識によって分けられたスピーチレベルと標準化した書くテストの点数との間には、明確な相関は見出されないことを実証した。<br />The current study suggested that automatic feedback in an online language learning environment can lead to a possible increase in autonomy especially when coupled with speech recognition. However, direct [pushed] feedback, such as in an email, is unlikely to increase motivation. Learners appear to become more willing to engage in tasks when the the feedback is instant and appears objective and intelligent. A secondary result demonstrated that speech recognition could distinguish between a native speaker and a learner, but surprisingly, there was no detected correlation between speech levels graded by speech recognition and scores in a standardized written test.<br />研究課題/領域番号:15K02714, 研究期間(年度):2015-04-01 - 2018-03-31 続きを見る